腸は単なる消化器官ではない        

レジスタントスターチ(RS)の健康機能の大半は、腸内細菌が関与する、いわゆるプレバイオテック作用によると考えられています。この作用をより理解するため、腸及び腸内細菌について最近わかってきていることを紹介します。

私たちの体内には、多種多様(1000種類ともいわれる)な別生命体(細菌)が100兆個も住んでおり、その大半は、かれらにとって住みやすい環境の腸内にいます。私たちの体を構成する細胞でさえ約40兆個であることを考えるとこの数は驚くべきことかと思います。このような多種で膨大な数の細菌が私たちの体に何らかの影響を与えていることは容易に考えられますが、実は、それが分かってきたのは近年になってからで、それまでは、腸は消化器官の一部としか考えられていませんでした。

人の腸には多種多様な細菌叢が
膨大な数で共生しており、私たちの
健康に多大な影響を与えていることがわかってきました

腸は単なる消化器官ではない

腸内細菌が住む腸の働きについては、日本を含め、世界中の多くの科学者達の研究が進み、また1990年代頃からの解析技術などの発展もあり、多くの事実が解明され、今では、私たちの腸は「第二の脳」とも言われるように多くの機能を備えていることがわかってきました。即ち、消化器官としての機能だけでなく、腸には独自の免疫系、内分泌系、神経系、などの機能があり、私たちの健康に大きな影響力を発揮していることが明らかになっており、その影響力を発揮するうえで腸内細菌の存在が不可欠であることも解明されています。

腸の免疫系機能

腸は、体内と体外をわける城壁のような役目を果たすために、食べ物はもとより、病原菌やウィルスなど有害なものにも対応できるよう独自の腸管免疫系機能を備えています。これにより、腸は、脳の指令を受けて動くだけでなく、独自の判断で活動できる体内で最大の免疫系器官であるといえます。腸壁細胞の貴重な栄養源である酪酸の産生を促進するRSはこの面でも注目されています。

腸と脳は互いに情報を交換しながら私たちの健康を維持促進しています。またこの脳腸相関には腸内細菌の存在が不可欠と言われています。

腸の内分泌系機能(ホルモン分泌作用)

私たちの体内で何らかの異常やアンバランスが生じた場合、調節し元の正常な状態に戻す為にホルモンとよばれる物質が担当細胞から分泌されます。腸には、このようなホルモンを分泌する腸管内分泌細胞も存在しており内分泌器官としての役割も担っています。例えば、おなかがいっぱいだと感じる「満腹感」という感覚も、腸から分泌される食欲抑制満腹ホルモンが「満腹だからもう食べられない」という信号を脳に伝えることにより発現すると言われています。RSが担当細胞を刺激活性化する上で一役かっている可能性を示唆する研究報告もあり、この面でもRS研究が進められています。

腸の神経系機能

腸には脳や脊髄に次いで多い神経細胞が多種存在しており、私たちの思考をつかさどる脳の様に、入ってきた情報を処理し、処理した情報を他の器官に伝達する機能のあることがわかっています。つまり腸は、神経細胞が網のように広がっており、脳の指令が無くても自分で考えて、自分で活動することができる独自の腸管神経系ネットワークをもっているのです。これにより腸と脳は情報をお互いに交換しあう関係にあり、これは脳腸相関といわれています。この腸と脳の関係にも腸内細菌が大きく関与しているといわれています。この分野でも腸内細菌の増殖や活性化をサポートするRSが注目されており、多くの研究が行われています。

参考文献

Nature. 2012 May 9; 486(7402):222-7.

  • Li M, et al. Symbiotic gut microbes modulate human metabolic phenotypes. Proc Natl Acad Sci USA. 2008;105:2117–2122.
  • Julien Chilloux et al. The microbial-mammalian metabolic axis, a critical symbiotic relationship  Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2016 July ; 19(4): 250–256
  • M. Fassarella et al. Gut microbiome stability and resilience: elucidating the response to perturbations in order to modulate gut health Gut 2021 Mar; 7 (3) : 595-605.
  • Peter DeMartino et al. Resistant starch: impact on the gut microbiome and health Curr Opin Biotechnol. 2020 Feb; 61:66-71.
  • Huicui Liu et al.Health beneficial effects of resistant starch on diabetes and obesity via regulation of gut microbiota: a review Food Funct.2020 Jul 22; 11(7): 5749-5767
  • Michele P. L. Guarino et al. Mechanisms of Action of Prebiotics and Their Effects on Gastro-Intestinal Disorders in Adults Nutrients, 2020 Apr 9; 12(4):1037.
  • Vadim Osadchiy et al. The Gut-Brain Axis and the Microbiome: Mechanisms and Clinical Implications Clin Gastroenterol Hepatol 2019 Jan;17(2):322-332.
  • Ygor Parladore Silva et al. The Role of Short-Chain Fatty Acids From Gut Microbiota in Gut-Brain Communication  Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Jan 31;11:25.
  • Mark Lyte et al. Resistant Starch Alters the Microbiota-Gut Brain Axis: Implications for Dietary Modulation of Behavior  PLoS One 2016 Jan 8;11(1): e0146406
  • Caitríona Long-Smith et al. Microbiota-Gut-Brain Axis: New Therapeutic Opportunities  Annu Rev Pharmacol Toxicol 2020 Jan 6;60:477-502.
おすすめの記事