レジスタントスターチの健康機能-プレバイオティクス作用4

 レジスタントスターチの多様な健康機能のうち、かなりの部分は、腸内細菌を通じて発揮される、いわゆるプレバイオテックスとしての作用です。その一例が前号でも紹介した短鎖脂肪酸、酪酸、の産生をレジスタントスターチが促進する作用です。(下図参照)

レジスタントスターチのこの作用が、今大変注目を集めてます。
レジスタントスターチを摂取すると体内で酪酸という短鎖脂肪酸が多量に作られます。この酪酸は、大腸の腸壁に粘液バリアをつくり、有害菌の感染や異物の侵入を阻止し(腸粘膜防御作用)、体内で炎症を引き起こす有害なサイトカイン(炎症性サイトカイン)を抑制する(抗炎症性作用)ことが報告されています。
この酪酸の抗炎症作用が、世界でパンデミックを引き起こした新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に有効ではないかと注目されているのです。

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新型コロナウィルス感染症が猛威をふるう中、世界中の人が待ち望んでいるのが治療薬や継続的なワクチン供給です。また、感染しても重症化しないための食品素材やサプリなどの開発にも大きな期待が寄せられています。
このことに注目した研究者達が、レジスタントスターチの抗炎症効果を確認するために、既存の文献で報告されているヒト臨床試験データをメタ分析して、その研究成果を報告しています。
報告の中で、研究者達は、“431のヒト臨床試験から選定条件をクリアーした、総対象被験者数679名のデータ分析を行ったところ、レジスタントスターチの摂取により、炎症を抑える抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生が促進され、有害な炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-6)が抑制されることが確認できた”と結論づけています。
 この研究と殆ど時を同じくして、米国の大学研究者達が、新型コロナ感染者でのレジスタントスターチの臨床試験の実施を発表しました。これは、米国のエール大学が中心となり、ミシガン大学・ミネソタ大学が共同で行う、新型コロナウィルス感染陽性者1500名を対象にした四重盲検無作為対照臨床試験(下表「試験の概要」参照)ですが、2020年6月にスタート、当初の発表よりも遅延しており、2022年3月に完了する予定です(2021年10月現在の情報)

研究者達は、本試験実施の根拠を以下のように挙げています。

  • 新型コロナウイルス感染の重症患者では、肺炎症状が生じ、有害な炎症性サイトカイン(IL-6・TNFα)の上昇が認められる
  • レジスタントスターチの摂取により酪酸が産生され、酪酸は炎症を抑える抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生を促進する
  • 抗炎症性サイトカインが、肺炎症状を抑えることが(動物試験で)実証されている

レジスタントスターチの抗炎症作用については、他の研究者達も、一般の健常者での腸内バイオマーカーに関する大規模な臨床試験の準備を進めており、これら一連の試験結果に大きな期待が集まっています。

試験の結果が論文として発表されましたら、本サイトで取り上げたいと考えています。

以下次号

参考文献

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Effects of Short chain fatty acids on gut morphology and function

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Review Article: The Role of Butyrate on Colonic Function

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Resistant Starch: Physiological effects and in vitro fermentability 

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Dietary Sodium Gluconate Protects Rats from Large Bowel Cancer by Stimulating Butyrate Production

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