レジスタントスターチと炎症

炎症とは、ウィルスや細菌の侵入により、組織や細胞などが障害を受けた時に起こる生体の防御反応です。このような炎症反応は、循環器系や代謝系疾患をはじめ、肥満や糖尿病など多くの状況下でも起こります。

生体にとって重要な防御反応である炎症は、体内の免疫細胞が作る炎症性サイトカインと呼ばれる生理活性物質により促進されます。通常、炎症性サイトカインは、炎症を促進して、侵入した外敵や侵害を受けた細胞などを破壊・駆除して体を守るのですが、過剰分泌されると、いわゆるサイトカインストームという免疫暴走状態となり、正常な細胞や組織も攻撃するようになり、それが本来の症状を逆に重症化させることになります。

サイトカインの過剰分泌を抑制するため抗炎症剤などが使用されることになりますが、最近の研究によると、ある種の食材の中にも、このような炎症性サイトカインの過剰分泌を抑制する働きのあることが明らかにされてきており、中でも注目されているのが、レジスタントスターチです。高レジスタントスターチ食が、腸内で短鎖脂肪酸の産生を通じて、炎症性サイトカインを抑制する効果があることが報告されています。

炎症性サイトカインの代表的なものとして、TNFα(腫瘍壊死因子)やIL-6(インターロイキン)などがあります。炎症性サイトカインの過剰分泌に対するレジスタントスターチの抑制効果を示す研究報告の一部を以下ご紹介したいと思います。

カナダ、米国、イランの研究者チームは、レジスタントスターチの炎症抑制効果を調べるための臨床試験を行っています3)。この試験は、46名の透析患者を被験者とした二重盲検無作為コントロール方式で行われています。

試験期間は2ヶ月(前期1カ月、後期1カ月)で、試験に使われたのは、レジスタントスターチ20g~25g/個を配合したビスケットで、被験者にこれを毎日1個8週間食べてもらい、各試験期間の前後で炎症性サイトカインの測定を行っています。尚、対照にはレジスタントスターチは配合から外し、小麦粉だけで作ったビスケットが使われています。

試験の結果はグラフが示すように、レジスタントスターチ摂取群で、炎症性サイトカインであるIL-6及びTNFαの有意な減少が認められ、研究者達は、今回の試験に参画した被験者群では、レジスタントスターチが炎症抑制に期待できると報告しています。

また、糖尿病患者を対象にした、レジスタントスターチの炎症抑制作用に関する研究報告もあります6)。これは、60名の2型糖尿病患者(女性)を被験者とした無作為対照試験で、被験者をレジスタントスターチ群(10g/日)と対照群(0g/日)に分け、8週間の試験期間の前後に採血し炎症性サイトカインの比較分析を行っています。

試験の結果をみると、炎症性サイトカインであるTNFαが、摂取前157.57から摂取後118.52に、また、IL-6は318.69から261.26へ其々有意に減少しており、研究者達は、レジスタントスターチが免疫暴走の抑制に期待できると報告しています。

炎症性サイトカインに対するレジスタントスターチの抑制効果について現在までに報告されているヒト臨床試験に関する文献(一部)を表にまとめてみました。

被験者数や試験期間などは未だ限定的ですが、これらの試験結果は、レジスタントスターチが炎症性サイトカイン(IL-6やTNFα)の抑制に対して期待できることを示唆しており、今後より大規模な研究が期待されています。

なお、米国では、大学研究者チームによる新型コロナウィルス感染者1500名を対象としたレジスタントスターチの炎症性サイトカインの抑制効果を確認するための臨床試験がスタートしており、その結果もあわせて期待されています。

参考文献

1.Resistant dextrin. As a prebiotic, improves insulin resistance and inflammation in women with type 2 diabetes a randomized controlled clinical trial

Akbar Alisagharzadeh, Parvin Delighan, Bahram Pourghassem Gargari and Mohammad Asghari-Jafarabadi

Faculty of Medicine, Bone Research Center, Tabriz University of Medical Scinece, Iran

British Journal of Nutrition (2015), 113-321-330

2. A randomized placebo controlled clinical trail to determine the impact of digestion resistant starch MSPrebioutic (R) on glucose, insulin and insulin resistance in elderly and mid age adults.

Chelle J. Alfa, David Strang, Paramijit S. Tappia, Nancy Olson, Pat DeGagen, David Bray, Brenda-Lee Murray, and Brett Hiebert

Department of Medical Microbiology, University of Mantoba, Canada

Clinical Grial Frontiers in Medicine 2018 Jan. Vol. 4, Aticle 260,

3. Effect of high amylose resistant starch (HAM-R52) supplementation on biomarkers of inflammation and oxidative stress in hemodialysis patients a randomized clinical trial

Hamid Taybei Khosroshahi, Nosratola D. Vaziri, Behzad Abedi, Bahlol Habibi ASL, Morteza Ghojazadeh, Wanghui Jinng and Amir Mausur Vatankhah

Kidney Research Center, Tabriz University Medical Science Ca, USA

Hemadialysis Internationa, International Society for Hemodialysis 2018;00-00-00

4. Could resistant starch supplementation improve inflammatory and oxidative stress biomarkers and uremic toxins levels in hemodialysis patients? A pilot randomized controlled trial

Esgalhako M, Kemp JA. Azevedo R, Palva BR, Stokler MB. Golenga CI, Borges NA, Nakao LS, Malta D.

Funct. 1018;96508-16

5. Is there any place for resistant starch, as alimentary prebiotic, for patients with type 2 diabetes?

Gargari BP, Namazi N, Khalili M, Samadi B, Jalarrabadi MA, Dehghan P

Complement Ther Med 2015.23810-5

6. Amylose resistant starch (HAM-R52) supplementation increases the proportion of Faecali bacterium bacteria in end-stage renal disease patient; microbial analysis from a randomized placebo-controlled trial.

Michael R. Laffin, Hamid Taybei Khosroshahi, Heekuk Park, Luke J Laffin, Karen Madsen, Nosratola D. Vaziri, Behzad Abedi,

Division of Nephrology, University of Calfornia Co. USA

Hemadialysis Internationa, International Society for Hemodialysis 2019;00-00-00

7. Modulation of starch digestibility in breakfast cereals consumed by subjects with metabolic risk, impact on markers of oxidative stress and inflammation during fasting and the postprandal period.

Lambert Pocheron S., Normand S, Blond E, Sothier MRoth H,  Meynier A, Winoy S, Laville M,

Eur. J Nutr 2018, 57;798-807

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