レジスタントスターチと脂肪燃焼作用

レジスタントスターチは難消化性の炭水化物であることに加え、腸内細菌を通じて様々な健康機能を発揮することから、近年、健康志向の人に注目を集めている食品素材です。レジスタントスターチと肥満の関係、特に脂肪燃焼を促進する働きや、食欲調整ホルモンを通じた食欲抑制作用などの研究が進められており、その成果が期待されています。世界人口の10%を超える人が抱える肥満は大きな問題になっています。レジスタントスターチのこの分野での研究の一端を紹介したいと思います。

肥満との関係で、レジスタントスターチが期待される第一の理由は、レジスタントスターチが、難消化性の炭水化物(でん粉)である点です。通常の易消化性のでん粉の場合、摂取後速やかに消化吸収され血中に取り込まれます。取り込まれる量が、エネルギー源などとして使用される量を上回った場合、余りは脂肪として体内に蓄積され、これが肥満につながります。ところが、レジスタントスターチは消化吸収されず、血糖やインスリンも抑制するので、そもそも脂肪蓄積の要因とはならず、これが炭水化物/糖質ダイエットに最適な素材として注目されている理由なのです。

二番目の理由は、口腔内や胃・小腸で分解・消化を免れて、大腸に到達したレジスタントスターチが、体内にすむ善玉腸内細菌により発酵されることにあります。腸内細菌により発酵されると短鎖脂肪酸が産生されます。この短鎖脂肪酸が、炭水化物がエネルギー源として利用されるのを抑制し、その代わりに、既に体内に蓄積され
ている脂肪をエネルギー源に利用するよう働くのです。このメカニズムにより、体内に蓄積されている脂肪が減少するというわけです。ある研究によると、摂取する炭水化物のわずか5.4%をレジスタントスターチに置きかえるだけで、食後の脂肪燃焼を20~30%増昇させたとの報告もあります。
レジスタントスターチと肥満については多くの動物試験が行われています。表1に、レジスタントスターチと体脂肪量やサイズへの影響を調べた研究文献をまとめてみました。

いずれの試験研究結果も脂肪蓄積量の減少や脂肪サイズの縮小効果を実証しています。レジスタントスターチの脂肪蓄積に及ぼす影響について、英国、台湾、米国の共同研究チームが行った試験研究があります。この試験では、レジスタントスターチの投与量を高用量群と低用量群に分け、用量により脂肪蓄積がどのように影響を受けるかを調査しています。結果は図1及び2が示すように、高用量でより大きい脂肪低減効果が認められており、この試験でもレジスタントスターチの脂肪燃焼効果が実証されています。

レジスタントスターチと脂肪燃焼に関してはヒトを対象とした試験も行われています。
米国の大学研究者達が行った試験では、レジスタントスターチとホエイ(乳清)プロティンを配合したパンケーキ(対照品として易消化性でん粉を配合したパンケーキ)が使用されています。この試験は、肥満型及びやせ型の女性24名を対象として、一重盲検無作為クロスオーバー方式で行われています。

図3が示すように、レジスタントスターチ及びホエイプロテインを其々単独に配合したパンケーキよりも、レジスタントスターチを配合したパンケーキで肪燃焼効果が最も高かったことが示されています。この試験でも、レジスタントスターチ配合パンケーキが、配合していないパンケーキと比べ、大きい脂肪燃焼効果(脂肪蓄積が抑制)を示しており、動物試験でみられたレジスタントスターチの脂肪燃焼効果が、ヒトでも確認されています。

更に、レジスタントスターチの脂肪燃焼のメカニズムとしては、表2に示すような、食欲調整ホルモンを通じて脂肪蓄積が抑制されるというものがあります。即ち、レジスタントスターチが短鎖脂肪酸の産生を通じて満腹ホルモン(レプチン)を誘発する結果、脂肪蓄積が低減するというメカニズムです。

レジスタントスターチを含む食事を摂取すると、YYペプチド (PYY、PL-1) やグルカゴン様ポリペプチドー1(GLP))などの食欲調整ホルモンが産生され、満腹感がメッセージとして伝達され、食欲が抑制されると考えられています。満腹感が増昇し、空腹感がなくなれば食欲が抑えられ、摂取カロリーも減少します。このようなメカニズムや効果は他の食物繊維ではみられないと指摘する研究者もいます。

レジスタントスターチと食欲との関係を研究する為、米国の大学研究者達は、レジスタントスターチ(8g個)配合のマフィンと、配合していないマフィンを使った二重盲検対照試験をクロスオーバー方式で実施しています。絶食した20名の健常男女被験者にマッフィンを摂食させた後、VAS(係数質問票)方式により4つの質問項目に答えてもらっています。結果は図5及び6に示すように、レジスタントスターチ配合マフィンの摂食後の満腹感がより強く、又その持続時間も長かったと報告しています。

肥満が世界的にも大きな問題となっている現在、レジスタントスターチと肥満(脂肪蓄積抑制作用)に関する研究は今後も色々な角度から更に進められるものと期待されます。


参考文献
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