学び編 「 食後高血糖を防ぐには ? 」

第5回のFOOD ACADEMIAでは「食後高血糖」をテーマに、①学び編、②発見編、③実践編の3シリーズでお届けします。「発見編」と「実践編」では、社会人院生(病院の管理栄養士)のゆみさんからの具体的なアドバイスやメニューの紹介があります。ぜひ、併せてお読みください。

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FOOD ACADEMIA

第5回 「食後高血糖を防ぐには?」

 では、学び編の始まりです。

永井先生
あ、A先生おはようございます!
A先生
(小さい声)おはようございます・・・
永井先生
あれ?どうかなさいました?
A先生
あ〜、なんだかしんどくてねー。
永井先生
だいじょうぶですか?
A先生
いや、病気とかではないんですよ。先週の人間ドックで、HbA1cや空腹時血糖が高めだから、糖尿病にならないように食事とか気をつけてくださいって言われてね。
それ以来、大好きなご飯やパンを極力食べないようにしてるんだけどこれが結構辛いんですよ...
永井先生
そうだったんですね。ご飯やパンなどの糖質を抜くと食事全体のエネルギーが減るし、脳への血糖補給も十分でなくなるので、しんどく感じるんですよ。
A先生
なるほど~。でも、糖尿病って糖の代謝がうまくいかない病気なんでしょう?だったら、糖質を取らなければ糖尿病にはならないんじゃないですか?
永井先生
実は、糖質の摂取量と糖尿病のなりやすさとの関係は、まだはっきりわかっていないんですよ。
A先生
え~ そうなんですか!?
永井先生
ハイ。それに、防がなくちゃいけない病気は、糖尿病だけではありませんよね。
A先生
確かに糖尿病以外にも、血圧や肝臓とか、いくつか要注意って言われてます。
永井先生
最近、面白い論文が出ていまして、15000人くらいのアメリカ人を25年間追跡して、食事と死亡率の関係をみているんですけど、エネルギーの半分くらい(50~55%)を糖質で摂っている人が一番死亡のリスクが低くて、それより少なくても多くても死亡リスクが上がりやすいという結果になってるんです(図1)(文献1)。
図1 糖質エネルギー比率と全死亡率の関係

文献(1) Seidelmann et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. Lancet Public Health 3: e419-428, 2018

A先生
「エネルギーの50-55%の糖質」って、どれくらいですか?
永井先生
日本人の平均が57%くらいです。ご飯やパンなどの主食とおかずを組み合わせて3食を食べるイメージでしょうか。(文献2)

文献(2) 平成30年国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)

A先生
う~ん。でも、テレビで「食後の血糖値スパイクがあぶない」とか、やってますよね。うちは糖尿病が多い家系だし、ああいうのを見ると不安でね~。
永井先生
確かに、食後の血糖値は上がりすぎないほうがいいですものね。
でも、ご飯やパンを食べても食後血糖値が上がりにくい良い方法がありますよ。
A先生
本当ですか? 先生がお忙しくないときで良いので、詳しく教えて頂けませんか?
永井先生
では、後ほど研究室に資料をお持ちしますね。
A先生
ありがとうございます !

==========1時間後 A先生の研究室にて=========

永井先生
ハイ。これが食後血糖値を上げにくい3つの方法、題して「3本の矢」作戦です!(図2)
A先生
ア〇ノミクス?(笑) 
永井先生
1つずつできるところからでいいんですけど、3本の矢が揃うと最強になります(笑)
A先生
「毛利元就の三本の矢の教え」みたいですね。
実は私、広島(安芸)の出身なんですよ。
永井先生
それなら、先生にますますぴったりですね(笑)
図2 食後高血糖を防ぐための「3本の矢」戦略
A先生
なるほど~。第1の矢では、置き換えをすれば私の大好きな主食も食べられるんですね。私は雑穀の混ざった米や、ライ麦パンが好きなので、これなら全然、苦ではないです。
永井先生
1つ注意点がありまして、これまで食べていた量よりたくさん食べてはだめで、同じか少なめにして頂きたいのです。食後に血糖値を上げにくいとは言っても全く上げないわけではないので、食べすぎるとせっかくの効果が薄れてしまうんですよ。
A先生
体にいいからと、ついつい食べすぎてはダメだということですね。
なるほど~。
永井先生
第2の矢は、糖の吸収の邪魔をする、食物繊維を含む食べ物を一緒に食べるという方法です。
A先生
食物繊維はよく聞きますね。野菜以外にも、豆やきのこもいいんですね。あ、このレジスタントスターチというのは何ですか?
永井先生
「難消化性でんぷん」と言うのですが、小腸の中で消化されずに大腸にまで達するデンプンのことで、食物繊維と同じような働きをするんですよ。手前みそで恐縮ですが、FOOD ACADEMIAというネットの記事に書いているので、良かったらお読みください。レシピもありますよ!
A先生
ぜひ、読んでみます!
永井先生
第3の矢は、食べ方の工夫です。ここに書いてある、「ゆっくり食べる」「野菜から食べる」「朝食を抜かない」という食べ方は、どれも食後高血糖を防ぐ食べ方なんです。また、夕食が寝る直前だったり夜食を食べる人は、睡眠中に血糖値が高い状態が続きやすくなり、HbA1cが高くなりやすいんですが、先生は大丈夫ですか?
A先生
そういえば、研究で遅くなる日は、晩酌をしながら寝る前に食べていますね。食べる時間が血糖値に関係があるなんて、考えもしなかったなぁ。
永井先生
あれもこれもでは大変なので、できるところからやってみてくださいね。
A先生
ありがとうございます!主食を抜くしんどさから比べると、3本の矢作戦は、はるかに楽ですよ。早速、始めます。
永井先生
そうはいっても、忙しい日は、昼食はパンだけとかおにぎりだけとか、糖質だけの簡単な食事になりやすくありませんか? そんな時にとっておきの「隠し矢」があるのですが・・・。
A先生
といいますと?
永井先生
こちらです(図3)。
永井先生
食後に少し運動することで、筋肉で血糖を使っちゃいましょう、という作戦です。
A先生
運動は、ちょっと面倒かなぁ。。。
永井先生
おススメは、研究棟の「階段&ウォーク」です。食後に1F~4Fの2か所の階段を使って、ぐるっと回ってくるのですが、これなら短時間で済みますよ。脚の筋肉を動かすとたくさん糖を消費するんですよ。
A先生
そういえば、先生も時々階段を昇り降りされていますね。
永井先生
私の場合は、大好きなチョコレートを食べるために、運動でチョコの分のエネルギーを使ってるんですよ。
A先生
お互い、体に気をつけないといけないトシになりましたね~
永井先生
ホントですね~(しみじみ)。あ、また、わからないことがあればご相談くださいね。
A先生
ホントにお世話になりました。来年のドックでは良い結果になるように頑張りますよ!
永井先生
いいお知らせを待ってます!!

さて、今回の「学び編」はいかがでしたでしょうか?

続く「発見編」「実践編」では、大学院生のゆみさん(病院の管理栄養士)が、食後高血糖を防ぐ具体的な方法やメニューなどを紹介してくれます。楽しみにお待ちください!

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