学び編「朝食は1日のスタートスイッチ」

第4回のFOOD ACADEMIAでは「朝食」をテーマに①学び編、②発見編、③実践編の3シリーズでお届けします。
新型コロナ対策で、研究室ではオンライン勉強会が続いています。さて今回はどんな話題でしょうか?

※オンライン勉強会を場面設定した原稿で、登場人物の発言はフィクションです。
もちろん、ご紹介した内容は本物ですよ(^^

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FOOD ACADEIA 第10回=レジスタントスターチ= 
学び編「朝食は1日のスタートスイッチ」

オンライン教室にて

先生
揃ったようですね。では、勉強会を始めましょう。
全員
(PC画面から)はーい。
先生
今週は4年生チームの回でしたね。さて、誰から発表して頂きましょうか?
なぎさ
(画面に挙手マーク)では、私から。
先生
なぎささん、お願いします。
なぎさ
ゆきな
嬉しいです(*^ω^*)
なぎさ
朝食が、体内時計、なかでも内臓の時計を外界の24時間リズムに合わせるために大切だということがよくわかりました。でも、朝食をおにぎりやパンだけというように、簡単に済ませることもあります。それでもいいのか、それとも何か特定の栄養素が必要なのかを知りたいな~と思って調べてみました。
先生
おもしろそうですね。詳しく聞かせてください。

(画面の共有を開始)

なぎさ
大きな栄養素(マクロニュートリエント)は、炭水化物、脂質、たんぱく質の3つです。さて、みなさん、この中で、朝食でとると体内時計を整える栄養素はどれでしょう? そうだと思うものに挙手してください。
図1 朝食クイズ(手はオンライン会議で挙手した人数を表している)
なぎさ
みなさん、さすがです!
正解の1つは炭水化物です。1998年にStephan とDavidsonという先生方が、マウスでこんな実験をされました。まず、ラットの視交叉上核(主時計)を壊しました。末梢(内臓)の時計だけを調べたかったからですね。そのラットに1日1回、エサを規則正しく与えて、24時間のリズムを作ると、ラットは次のエサの時刻を予測して、予期行動を起こすようになります。こうして内臓の時計の24時間リズムができあがったところに、食餌の時間を8時間ずらして、どんなエサが、ずれたリズムを合わせる作用が強いのかを調べたんです(文献1)。
先生
単一の栄養素の同調作用を調べた最初の研究ですね。
なぎさ
味(甘さ)が大事なのか(サッカリンを使用)、エネルギーをたくさん摂ることが大事なのか(油を使用)、それとも全身の栄養源であるグルコースなのか、いろいろなエサで調べた結果、グルコースがリズム合わせの作用が強かったそうです。一方、脂質にはそのような作用はみられないという結果でした(文献1)。

文献1 Stephan & Davidson. Glucose, but not fat, phase shifts the feeding-entrained circadian clock. Physiol Behav. 65: 277-288, 1998

学生A
なぜ、グルコースにそんなに強い同調作用があるんですか?
なぎさ
炭水化物を食べると、消化されてグルコースになって吸収され、血液中に入り体内を巡ります。これが血糖でしたね。この血糖が増えてくると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌されるのですが、どうやら、このインスリンが肝臓の時計遺伝子の転写や翻訳を調節しているそうなのです(文献2、3)。

文献2 青山晋也.マクロニュートリエント,時間栄養学(柴田重信編),化学同人,pp.36-43, 2020
文献3 Crosby et al. insulin/IGF-1 drives PERIOD synthesis to entrain circadian rhythms with feeding time. Cell 177: 896-909, 2019

学生B
ということは、インスリンが出るように、朝食には炭水化物(糖質)をとることが大事なんですね。
学生C
たんぱく質は、どうなんでしょう?
なぎさ
たんぱく質も正解です。説明用のスライドを共有しますね。
図2 朝食クイズの答えと解説
なぎさ
たんぱく質だけを与えたマウスも、食事時刻に内臓の時計を合わせる「同調作用」がみられたそうです。こちらは、インスリンではなく、食後、血液中にグルカゴンやIGF-1(インスリン様成長因子)が増えるので、それらの作用ではないかと考えられています(文献2,4)。

文献4 Ikeda Y et al. Glucagon and/or IGF-1 Production Regulates Resetting of the Liver Circadian Clock in Response to a Protein or Amino Acid-only Diet. EBioMedicine 28: 210-224, 2018

先生
この図は、とてもよくまとまっていて、いいですね。
なぎさ
ありがとうございます(=^▽^=)
なぎさ
最後に脂質です。ステファン先生たちは植物油で実験されましたが、今は、魚油(EPAやDHA)やエゴマ油(α-リノレン酸)など、特定の種類の油で研究が進んでいるそうです。今は体内時計への影響はよくわかっていませんが、体に必要な栄養素として、脂質も朝食に取り入れてほしいと思います。
学生たち
なるほど~~!
なぎさ
なお、炭水化物では、GI(グルセミック・インデックス)の高い、つまり食後に血糖値を上げやすい食べものが、より高い同調効果を示す、とありました(文献5)。

文献5 Itokawa, et al. Time-restricted feeding of rapidly digested starches causes stronger entrainment of the liver clock in PER2: LUCIFERASE knock-in mice. Nutr Res 33: 109-219, 2018

学生A
でも、血糖値が上がるとよくないという話もありますよね。大丈夫なんでしょうか?
先生
朝に適量の炭水化物(糖質)を食べることで、昼食後の血糖値を上げにくいという「セカンドミール効果」があることが知られています。糖尿病の心配がない健康な方なら、体内時計を整えたり、脳へ血糖を補給したりと、午前中を活動的に、集中して過ごすことができるので、メリットのほうが大きいでしょうね。
なぎさ
FOOD ACADEMIA初回の学び編の「デンプンの種類」の話、皆さん覚えてますか?
学生B
あゆがデンプンの絵を描いてた回だね~。
なぎさ
インスリンが出やすいのは、アルファ化デンプン、つまり炊き立てのごはん、トースト仕立てのパン、温かい麺類など消化が良いデンプンだそうです。朝食にこれらを食べることは、時間栄養学からみて理に適っているそうです(文献6)

文献6 古谷彰子.食品加工と時間栄養.時間栄養学(柴田重信編),化学同人,pp.82-91, 2020

先生
忙しい朝に、炊き立て・できたてを食べるのは大変なので、電子レンジやトースターを使って、消化を良くして食べたいですね。
学生C
質問ですが、1つの栄養素だけ食べる、という食べ方はあまりしませんよね?
なぎさ
そのとおりです。マウスを用いた実験では、炭水化物+たんぱく質を組み合わせた食事が内臓の時計合わせに、より有効だったと報告されています(文献7)。

文献7 Hirao et a. A balanced diet is necessary for proper entrainment signals of the mouse liver clock. PLoS ONE 4(9) e6909, 2008

先生
おもしろいですね。朝食と栄養素に関するポイントが2つありましたね。ひとつは、GI値の高い、温かいごはん、パン、麺類が朝食に良さそうだということ。もうひとつは、たんぱく質も含めてバランスよく食べると、なお良い、ということですね。
なぎさ
ヒトでの結果については書かれていなかったので、これから研究が進んでいくといいなと思いました。
先生
わかりやすい発表でしたね。お疲れ様でした。
では、今日の話をまとめましょう。データを共有します(図3)。
図3 信号機+青色の4色で朝食を整える
先生
皆さんは、小学校で「赤・黄・緑の食品」について習っていますよね。覚えていますか?
みさき
(挙手)はい。「赤」は体を作るもとになる食品、「黄」は熱や力のもとになる食品、「緑」は体の調子を整える食品、と習いました。
先生
その通り!よく覚えていましたね。この3色は、実は信号機の色でもあります(図3)。
なぎささんの発表でもあったように、図の1と2、黄色の「炭水化物を含む主食」と赤色の「たんぱく質を含むおかず」が体内時計のスイッチをONにするのでしたね。そして、3と4、「緑の食品である野菜や果物」、4の「乳製品豆・豆乳」は、ビタミンやミネラルを含み心身のメンテナンスをしてくれます。牛乳や乳製品は、青と白のパッケージが多いので、信号機の背景の青空からイメージして頂きます。
学生たち
なるほど~~。
みさき
よく「主食」「主菜(大きいおかず)」「副菜(小さいおかず)」をそろえてと言いますが、朝食ではとくに、体内時計を整えるという点からも意味のあることなんだとわかりました。
先生
そのとおりです。まずは朝食を食べること、食べられる人は4色を、最初は1色からでいいので少しずつ揃えていくといいですね。
学生A
でも、朝はバタバタと忙しくて、毎日実行するのは大変そうかな~と思います。
先生
(笑)私もそうです。忙しいと食事がおろそかになりやすいですね。
実行のヒントになりそうなことを、この続きの「発見編」でなぎささんに、「実践編」でみさきさんにお話していただくことにしましょう。
なぎさ
わかりました!
みさき
頑張ります!
先生
皆さん、楽しみにお待ちください。

【関連リンク】
兵庫県立大学 栄養教育・栄養生理学研究室ホームページ

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