発見編「腸活はじめませんか?」

第3回のFOOD ACADEMIAでは「腸活」を取り上げ、①学び編、②発見編、③実践編の3シリーズでお届けします。今回は②発見編をラボのTV会議実況風でお伝えします。

※オンライン勉強会を場面設定した原稿で、登場人物の発言はフィクションです。
もちろん、ご紹介した内容は本物ですよ(^^

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FOOD ACADEIA 第8回=レジスタントスターチ= 
発見編「納豆売り切れ騒ぎから見えてきたこと」

先生
では、かほさん、続けてください。あら、メガネをかけたのね。
かほ
ハイ(キラッ✧)。では、私のPC画面を共有します(図1)。

図1 怪情報を検証する

かほ
ネットの情報は「納豆などの発酵食品は腸内常在菌のバランスを整え免疫力を上げるので、新型コロナにかかりにくくする」というものでした。そこで皆さんに質問です。正しい情報だと思ったら挙手してください。最初は、「腸内環境が良くないと免疫力が下がる」です。
院生たち
(全員挙手)
かほ
全員が正しいという回答ですね。それでは、次です。「腸内環境が良くなると免疫力が上がる」はいかがでしょうか?
院生たち
うーーん(悩む)
かほ
先生にいつも、「理屈では正しそうに見えても、科学的検証がされているかどうかは別だから、情報は疑うところから始めなさい」と言われるので、そういう反応だと思いました。
先生
そんなにいつも言ってる?
かほ
ハイ(きっぱり)。では、次の図を出します(図2)。 

図2 腸内環境と免疫力の関係(文献1の内容をもとに著者作成)

文献(1) 種本 俊.腸内細菌叢と免疫の関わり.日本臨床免疫学会会誌.40: 408-415, 2017

かほ
種本 俊先生の論文(1)を参考に作った図です。
大腸には、約1000種類、100兆個もの腸内細菌が常在していて、宿主であるヒトと共生しています。腸内細菌フローラは抗生物質などを飲むと一時的にバランスが乱れることはあっても復元力が強く、恒常的にバランスを維持しているそうです。
先生
「町内」の住民が自分の家や土地を簡単に他人に明け渡したりしないように、「腸内」の住民(常在菌)も互いにテリトリーを守っているのですね。
かほ
ハイ。ところが、次回で紹介する理由で、「ご腸内」の住民のなかでも、素行のよろしくない住民が勢力を伸ばしてきたとします。そうなると、有害物質をつくって腸管を傷め、その結果、ご腸内の壁(バリア)がやぶられ、敵(有害物質や病原体)がやってきたときに、体内への侵入を許してしまいます。ですから「腸内環境が良くないと免疫力が下がる」は正しい、ということになります。
先生
かほさん、その説明、お見事です!!(笑)
院生A
初○学!?
かほ
えへへ。ここでみなさんに、もう1つ質問があるんですが、約100兆個の腸内細菌を全部集めたときの重さは、次のうちどれだかわかりますか?

1.10 g
2.100 g
3.1000 g
院生たち
いくら100兆個っていっても1つ1つは超軽いんだから、1 kgはないよね~
         (10 gと100 gに挙手数名)
かほ
辨野義己(べんのよしみ)先生のご著書によると、正解はこちらです(図3を共有)。 

 図3 ヒト体内の腸内細菌全部合わせた重さは?(文献2の内容をもとに著者作成

 (2) 辨野義己.新時代を迎えた腸内常在菌研究.日経サイエンス2017年2月号,pp.34-4

院生B
え~!! 私の体の50分の1は腸内細菌ってこと~~?
院生A
ちょっとBちゃん、体重バレバレだよ。
かほ
(笑) なので、辨野先生のおっしゃる「体からのお便り(大便のこと)」は、その8割 が水分ですが、残りを3等分にすると、食べかす、腸の粘膜、腸内細菌、となるそうです。
院生B
ということは、1回のお便りの約7%は腸内細菌なんだ~。そりゃ確かに、結構な量だ よね。
院生A
ちょっとBちゃん、お便りの量までバレそうだよ。
先生
「体からのお便り=食べかす」、と思っている人が多そうなので、この結果は意外でしょうね。腸の粘膜も代謝が盛んで日々生まれ変わっていますからね。
かほ
で、やっと納豆(発酵食品)まで来ました(笑)。発酵食品には、一般に善玉の腸内細菌 を増やす働きがあるものが多いそうです・・が、発酵食品を食べて腸内環境が良くなると免疫 力が上がる、は正しいでしょうか?
院生A
腸内環境が良くなる、は正しいかもしれないけれど、どれくらい免疫力が上がるか は、はっきりとはわからないのでは~?
かほ
私もそう思います。宿主にとって有益な腸内細菌(いわゆる善玉菌)のエサとなる食べ ものや食品成分のことを「プレバイオティクス」というのですが、腸内の善玉菌が喜ぶエサを補給することで、腸内環境を整えるというものです。納豆などの発酵食品も、その一部が大腸 まで届いて、プレバイオティクスとして働くことが期待されているのだと思います。
先生
でも、どれくらい食べれば善玉菌が増えるのか、腸内細菌の構成がどのように変化すれば免疫力がアップするのか、そもそも何を指標として評価するのか、など「免疫力が上がるかどうか」の検証はこれからでしょうね。
かほ
では、発酵食品を食べることは、まったく無駄なんでしょうか?私は、納豆やヨーグル ト、ぬか漬けなどが大好きですなんですけど。
先生
免疫力がどれくらい上がるかはわからないけれど、免疫力をキープする、あるいは下げないために、「腸内環境を乱さない」ことが大切なのは確かですよね。
院生たち
(うなずく)
先生
新型コロナウィルス感染症の予防という意味では、免疫のシステムの上位に体内時計があるので、学び編でゆきなさんが紹介してくれたように、食事、活動、睡眠のリズムを整えることはとても大事なことでした。
ゆきな
(^ω^)(嬉しそう)
先生
次に、ウイルスを攻撃してくれる免疫細胞を応援するために、栄養面ではタンパク質や糖質を含む、つまり主食と主菜(魚・肉・卵などの主となるおかず)を中心に、ビタミンやミネラルも含む野菜などを添えた、バランスの良い食事をとりたいですね。
かほ
私は「腸活」。発酵食品以外にも、これまでのFOOD ACADEMIAで紹介されてきた、レジスタントスターチや食物繊維をしっかりとるようにしています。
先生
美味しいレシピも紹介されていましたね。他のみなさんはいかがですか。
院生A
私は好きな音楽を聴きながらお風呂にゆっくりつかって1日の疲れを癒してます。
先生
疲れとストレスをためないことも、免疫細胞への応援になりますね。
院生B
私は、ジョギングを始めました。
先生
いいことですね!みなさん、それぞれしっかり頑張っていてうれしいです。
では、これでオンライン勉強会を終わります。次回の「腸活」③実践編は、かほさんが、「腸活」レシピを紹介してくれます。登校自粛前に研究室で作ってくれたのですが、とても美味しいですよ。
かほ
楽しみにお待ちください!

注記: 「腸活」の定義はまだ定まっていないようですので、本稿では「腸内環境を健全に保つことを意識した生活(食事・運動・ストレス管理)によって心身の健康をめざす、行動やプロセスのこと」としています。

【執筆協力】
兵庫県立大学大学院 環境人間学研究科 栄養教育・栄養生理学研究室 末継 夏帆

【関連リンク】
兵庫県立大学 栄養教育・栄養生理学研究室ホームページ

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