
こんにちは。
兵庫県立大学 栄養教育・栄養生理学研究室の永井成美です。前回の「レジスタントスターチ」3回シリーズが大変好評でしたので、お伝えしきれなかった内容を続編としてお届けします。
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FOOD ACADEMIA
第2回 ①学び編「レジスタントスターチを学ぼう パート2」

みさき
先生、おはようございます!

先生
おはよう。あら、何を食べてるの?

みさき
サツマイモです! FOOD ACADEMIAで紹介されていたので、ふかしたのをおやつに持ってきてるんですよ。

先生
さっそく、実行してるのね~。

みさき
電子レンジ加熱よりも蒸すか茹でるほうが、そして、アツアツよりも冷めたお芋のほうがレジスタントスターチの量が多いのでしたよね。

先生
そうそう。

みさき
じっくり加熱するとお芋の中のデンプンの糖化がより進むので、甘味が強くなると授業で習いました。

先生
よく覚えてますね。

みさき
これで、お通じよくなるかも。

先生
効果があったら教えてね。

みさき
ところで先生、質問があるんですけど。

先生
何でしょう。

みさき
レジスタントスターチが多いのは、野菜やイモ類など「植物性の食品」が多かったようですが、動物性の食品には含まれていないんでしょうか?

先生
いい質問ですね!では黒板に書き出してみましょう。
レジスタントスターチは植物性食品に多い?


みさき
やっぱり、植物性食品ばっかり。どうしてなんでしょう?

先生
みさきさんは、理科で、光合成について習いませんでしたか?

みさき
うーーん。光合成ですか?多分こんな感じだったかな~~?
※ペンで書く<みさきノート>
※ペンで書く<みさきノート>
<みさきノート>


みさき
書けました!

先生
ちょっと説明してみて。
光合成の模式図


みさき
光合成とは、植物が葉緑体の中で、光エネルギーを使って、水と二酸化炭素からブドウ糖と酸素を作り出すしくみだと習いました。

先生
このブドウ糖がデンプン(植物の養分)になるのですね。この絵はとてもわかりやすいですよ。

みさき
ありがとうございます!

先生
植物は光合成を行って、デンプンを体内に蓄えるのです。デンプンは、英語でなんと言いますか?

みさき
starch(スターチ)です。あ、もしかして

先生
レジスタントスターチは難消化性デンプンです。スターチ(デンプン)を含む植物性食品の中に、ヒトの酵素で消化しにくいスターチをもつ食品がある。つまり、「デンプン質食品の中にレジスタントスターチあり」なのですよ。

みさき
格言みたい (笑)

先生
黒板に、それぞれの食品の糖質量(注:今の食品成分表では利用可能炭水化物と呼ばれています。利用可能炭水化物+食物繊維=炭水化物、です)を書き足してみましょう。デンプン量そのものを書きたいところですが、炭水化物成分表にまだ収載されていない食品もあるので、この値を参考にします。

※日本食品成分表2018(七訂),医歯薬出版株式会社を参照して計算した

みさき
100gあたり14~90gまで幅はあるけど、それぞれの食品の仲間では多いほうですね。

先生
動物は植物のように光合成ができないので、植物を食べることで「デンプン」を自分の栄養源としているのですね。しかも、体内に糖を貯蔵できる量はとても限られています。

みさき
ということは、動物性食品にはあまり糖質は含まれていない?

先生
さあ、どうでしょう。黒板の余白に書いてみますよ。


みさき
あー、やっぱり少ないですね!

先生
もともと糖質が含まれていない食品ですからね。「ほぼ0(ゼロ)」とあるのは、検査でわからないくらい少ないという意味です。

みさき
牛乳には少しありますが、これは乳糖なので、デンプンとは違うものですね。

先生
今回は紹介しきれなかったのですが、「グリーンバナナ」など、レジスタントスターチ給源食品(食材)のニューフェイスも出てきています。回を改めてご紹介しますね。
昔の人は食べていた

みさき
ところで、社会科(歴史)で、古代の遺跡を調べると、古代人がどんな食べ物を食べていたかがわかるというのを習ったことがあります。

先生
渋谷綾子先生の論文によると、今から12000年以上前の旧石器時代の遺跡からも、デンプン粒が発見されているそうですよ。※以下参考文献参照
(参考文献)
渋谷綾子.1鹿児島県西多羅ヶ迫遺跡から出土した石器の残存デンプン粒と後期旧石器時代前半期における遺跡内の植物利用.広島大学総合博物館研究報告3: 73-88, 2011

みさき
何のデンプンなのでしょう?

先生
ドングリ類やオニグルミなどの堅果類,ヤマノイモ,ユリ,カタクリなどの鱗茎・根茎類が旧石器時代に食べられており、その残存デンプンが石器などを調べると出てくるそうです。

みさき
ドングリですか?

先生
堅いものは石で割って、中のデンプンを石と石をすりあわせて粉砕していたと考えられているみたいですよ。

みさき
今の食べ物と比べると、精製されておらず消化も良くなさそうです。

先生
物理的に消化酵素が作用できないRS1が多かったでしょうね。それでも、人類にとってずいぶん長い間、デンプンは私たちの食とともにあり、命を支えてくれてきたということですね。

みさき
1万年以上も前から、植物の恵みを受けていたのですね。
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古代人はドングリを食べていた
(絵は著者の想像図)

先生
いま、食生活はとても豊かですが、植物の恵みであるデンプンや糖質が、「肥満の敵」「健康の敵」のように捉えられがちなのは、何とも残念です。

みさき
そ~いえば、「糖質ゼロ」を売り文句にしたCMをよく見かけますよ。

先生
食べ方や生活習慣が悪いのを、あたかも食品そのものが悪いかのように吹聴する今の風潮はいかがなものでしょうね。

みさき
良く体を動して、自然の恵みを頂いていた古代人を、少し見習ってもいいのかな、という気がしてきました。

先生
現代では、穀物が精製されすぎた結果、食物繊維の摂り方が減ってきていますね。食物繊維だけでなく、難消化性デンプンなども含めて、総合的に腸内細菌の栄養源になる食べ方へと戻していく時期に来ているといえそうですね。

みさき
(おおきくうなずく)

先生
次の「発見編」担当のみさきさんに、このあとの説明をお願いしようと思います。

みさき
がんばって準備します!

先生
みなさん、楽しみにお待ちください。
第2回へ続く