発見編「レジスタントスターチの機能・入手方法は?」

【ごあいさつ】
みなさま、はじめまして。今月の発見編を担当する久保歩美です。兵庫県立大学環境人間学部の食環境栄養(管理栄養士養成)課程、永井研究室に所属しています。どうぞよろしくお願いします。

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FOOD ACADEMIA 第1回 =レジスタントスターチ=
②発見編「レジスタントスターチの機能・入手方法は?」

【その1 レジスタントスターチの機能】

■ はじめに

前回の学び編(レジスタントスターチについて学ぼう)は、レジスタントスターチに関する基礎知識が中心でした。発見編では、①レジスタントスターチの機能、と、②日常生活でどこでレジスタントスターチを見つけることができるのか、の2つについてお伝えします。

ではまず、レジスタントスターチについて研究されている早川先生や後藤先生の論文から、レジスタントスターチの機能について書かれた部分を紹介していきます。

より詳しい内容をお知りになりたい方は、➀早川先生 と ➁後藤先生 の論文を以下のリンクからお読みいただけます。

➀早川享志.健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働き.
日本醸造協会誌108(7), 483-493, 2013

➁後藤勝.レジスタントスターチの開発.日本家政学会誌65(4): 197-202, 2014

■ レジスタントスターチは大腸まで届く

レジスタントスターチは「健康なヒトの小腸内で消化吸収されない澱粉および澱粉分解物の総称」と定義されています。通常のデンプンは小腸で消化を受け吸収されますが、レジスタントスターチは小腸にある消化酵素の作用をほとんど受けずに大腸に達します。

その様子をわかりやすくシールで表現してみました(図1)。赤色がレジスタントスターチ、青色が通常のデンプン(消化性)です。

< 図1>

小腸で消化を受けにくいことや大腸まで届いて、そこで腸内細菌による発酵を受けるという性質によって、様々な体に良い効果が期待されているのです。
その機能とは・・・

➀血糖値の上昇抑制

1つめの機能は、食後の血糖値の上昇を抑えるというものです。
レジスタントスターチは難消化性、つまり消化を受けにくいデンプンであるため、通常のデンプン質の食品に比べて、食後のグルコースの吸収(デンプンが消化酵素の作用を受けて、グルコースとなり吸収される)がゆっくりになり、食後血糖の急激な上昇やインスリンの分泌が抑えられると考えられています。私が栄養学の授業で習った、食物繊維の作用とよく似ています。
日本では、レジスタントスターチを配合した食パンが、食後血糖上昇を抑える食パンとして特定保健用食品(トクホ)の認可を受けているそうです。パンのお店などで目にすることができるかもしれませんね。
実は、私の所属する管理栄養士課程にも、レジスタントスターチ入りの「おいしい」食パンを開発している先生方(吉村美紀先生、島田良子先生)がおられます。完成品ができたら、食べてみたいです!

➁排便状態の改善

レジスタントスターチを摂取すると、排便量や排便回数が増えることが報告されています。レジスタントスターチは不溶性食物繊維と比べて、腸内細菌の分解作用(発酵)をより受けやすいため、排便回数の増加などに効果があるとされています。

③脂質代謝の改善(コレステロールや中性脂肪を下げる作用)

肝臓や血液中のコレステロールを低下させる作用や、血液中の中性脂肪を低下させる作用が報告されています。コレステロールは体内で多く合成されていますが、合成を阻害する物質として「プロピオン酸」が知られています。レジスタントスターチが腸内で発酵される過程で「プロピオン酸」が生成され、脂質の代謝を改善すると考えられています。

➃満腹感が高まる

レジスタンスターチを含む食品を摂取することで満腹感が得られるため、食事摂取量が減ることが報告されています。レジスタントスターチを含む食品の摂取後には、満腹感と関連の深いホルモンの血中濃度が上昇し、24時間後も維持されているという報告があるそうです。レジスタンとスターチを摂取することで食べ過ぎなどの防止につながるかもしれません。

【その2 レジスタントスターチはどこにある??】

みなさん、レジスタントスターチの機能がわかると、どうやったらレジスタントスターチを入手できるのかが気になられませんか?

そこで、ここからは実際にどのような食品にレジスタントスターチが多く含まれているのかについてご紹介していきたいと思います。一緒にスーパーマーケットにお買い物に行くことにしましょう。スーパーマーケットの売り場を想像してみてください。

<図2>スーパーマーケット ※イラストはイメージです

はじめは野菜売り場です。野菜売り場には、レジスタントスターチが多く含まれている食品がたくさんあります。野菜では、かぼちゃ、いんげん豆、さやえんどう、そら豆、イモ類では、じゃがいも、さつまいも、長芋などがあります。

さつまいもに含まれるレジスタントスターチの量は、加熱や調理方法によって変化することが報告されています(参考文献を以下に記載)。一度加熱した後に冷ますとレジスタントスターチが増えるということ、調理方法では蒸す(蒸気20分)ほうが、電子レンジよりもレジスタントスターチ量が多いと報告されています(生: 12.0%、ゆで: 8.8%、蒸し: 10.2%、レンジ加熱: 5.2%)。

(参考文献〔学会発表〕)
亀井文、渡邉明恵.さつまいもの加熱調理方法の違いによるレジスタントスターチ量と不溶性食物繊維量について.日本調理科学会大会研究発表要旨集 25(0), 135, 2013

一方、長芋に関しても、調理条件別にレジスタントスターチの量が報告されています(文献)。生の長芋のレジスタントスターチ量は半月切りが33.5%、すりおろしが20.2%であったこと、および、70℃加熱の長芋のレジスタントスターチ量は、半月切りが5.2%、すりおろしが3.3%だったこと、沸騰加熱のRS量は半月切り4.7%、すりおろし6.1%だったそうです。NHKのガ〇テンで生の長芋が勧められていたのは、生のすりおろしていない(切っただけの)長芋が、いちばんレジスタントスターチの量が多かったからなのですね。

(参考文献〔学会発表〕)
亀井 文, 坂岡 優美.長芋の調理形態と加熱処理温度によるレジスタントスターチ量の変化.日本調理科学会大会研究発表要旨集 30(0), 141, 2018

続いてパン売り場を見てみましょう。パン売り場でもレジスタントスターチを含む食品を発見できます。レジスタントスターチは穀物の皮などに多いので、全粒粉のパンに多く含まれています。また、ライ麦パンにも多いことも知られています。

(参考文献)
ILSIEurope Concise Monograph Series翻訳版
「食物繊維」 翻訳監修:木村修一,ILSI Japan, pp.15-16, 2008年

最後に加工品売り場を見てみましょう。ここでは、レジスタントスターチが多く含まれているものとして、パスタ(スパゲティ)やコーンフレークが売られています。前回の基礎編の「あゆノート2」に書かれているように、パスタにはRS1(細胞壁の中にあるデンプン)が含まれており、野菜売り場の豆類や、お米売り場の玄米、パン売り場の全粒粉のパン、お菓子売り場の全粒粉を使用したクッキーにもRS1が含まれています。そして、コーンフレークにはRS3(老化デンプン)が含まれています。コーンフレークには、玄米や麦の混ざった、食物繊維とレジスタントスターチの両方が多いものもあります。コーンフレークなどは、手軽に食べることもでき、保存もきくので生活に取り入れやすそうですね。

最近、「高アミロース米」や、そのお米から作られた米粉パンにも、レジスタントスターチが多いことが報告されています(文献)。レジスタントスターチは、その機能性から、これからも多く注目を集めそうですね。

(参考文献)
大坪研一ほか.糖尿病および認知症の複合予防効果の期待される米飯および米加工食品開発の試み.生物工学会誌 97(10), 610-615, 2019

【おわりに】

レジスタントスターチは、意外と身近なところにありましたね。ぜひぜひ、食生活に取り入れてみてください! 次の章では、今回ご紹介した食品を、実際の食卓に上手に取り入れる方法をお伝えします。

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