
【FOOD ACADEMIA 第1回】ごあいさつ
みなさま初めまして。
兵庫県立大学 栄養教育・栄養生理学研究室の永井成美と申します。
このたび、「レジスタントスターチ研究室」に栄養と健康に関する記事を執筆する機会を頂き、管理栄養士をめざす学生達や院生と一緒に取り組むことになりました。毎月1テーマで、①学び編、②発見編、③実践編に分けてお届けします。みなさまの健康度アップにFOOD ACADEMIAをぜひお役立てください。
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FOOD ACADEMIA 第1回 =レジスタントスターチ=
①学び編「レジスタントスターチについて学ぼう」

あゆ
先生、おはようございます!

先生
おはよう。あら、何を飲んでるの?

あゆ
長芋シェイクです。ヨーグルトとバナナ、長芋をミキサーにかけてみました。

先生
それは、NHKの某有名番組(ガ〇テン!)の「腸内パワー」でやってた・・・

あゆ
そーです!レジスタントスターチです。生の長芋に多くてお通じがよくなるってことだったので、試してみてるんですよ。

先生
そーなの。また効果があったら教えてね。

あゆ
ところで先生、質問があるんですけど~。
授業で習った「食物繊維」と「レジスタントスターチ」って、どちらも消化されにくいし、お通じをよくする働きがありますよね。この2つは名前が違うだけで同じものなんですか?
授業で習った「食物繊維」と「レジスタントスターチ」って、どちらも消化されにくいし、お通じをよくする働きがありますよね。この2つは名前が違うだけで同じものなんですか?

先生
いい質問ですね。じゃあ、ちょっと整理してみましょうか。その番組に出演されていた岐阜大学の早川享志先生の論文(1)を拝見しましょう。
レジスタントスターチと食物繊維、どう違うの?

*(1)早川享志.健康増進に寄与するルミナコイドとしてのレジスタントスターチの働き.
日本醸造協会誌108(7), 483-493, 2013

あゆ
う~ん、食物繊維とレジスタントスターチは別モノ?
でも、どっちも「ルミナコイド」の仲間だし・・・ってゆーか、このルミナコイドって知らない言葉なんですけど。
でも、どっちも「ルミナコイド」の仲間だし・・・ってゆーか、このルミナコイドって知らない言葉なんですけど。

先生
「ルミナコイド」は、日本食物繊維学会が提唱した造語なの。luminal(消化管腔内の)と,accord(調和)と,-oid(-質の)の3つからできていて、「ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分」をひとくくりにした言葉なんですよ。

あゆ
食物繊維やレジスタントスターチ以外にも、ルミナコイドの仲間にはいろいろあるんですね。授業で習ったオリゴ糖とかもあります。

先生
食物繊維もレジスタントスターチも、ヒトの消化酵素では消化されにくいけれど、健康に役立つ機能をもっている、という点が共通しています。でも、成分をみると、デンプン質かデンプン質でないかという違いがある、と言えそうですね。

あゆ
あーなんだか、スッキリです!

先生
分類方法や食物繊維に何を含めるかは、国や組織によって考えが異なるそうです。もうひとつの違いは、食物繊維は日本の食事摂取基準(2020年版)に1日にとりたい目標量が書かれているけれど、レジスタントスターチは出てきません。食物繊維と比べてまだ研究が少ないので、理論的な裏付けはこれからなのでしょうね。

あゆ
研究が進むといいですね。
レジスタントスターチいろいろ

あゆ
冷やごはんがレジスタントスターチだという話も聞きます。生の長芋もだし、なんだか混乱しそう・・・

先生
先ほどの早川先生の論文に、Englyst という研究者による分類が書いてありますよ。

*参考文献(1)を参考に筆者作成

あゆ
あ~なるほど~。消化しやすいかどうかで分けられてるのですね。
①の炊きたてのごはんや、調理したばかりのポテトやパンは、水を加えて加熱することで、結晶構造の中に水が入りこんで緩む、糊化(アルファ化)という現象が起こると習いました。消化酵素が入りこみやすいので消化が速いのですね!
①の炊きたてのごはんや、調理したばかりのポテトやパンは、水を加えて加熱することで、結晶構造の中に水が入りこんで緩む、糊化(アルファ化)という現象が起こると習いました。消化酵素が入りこみやすいので消化が速いのですね!

先生
よく覚えていますね。

あゆ
②は、調理前の生の状態のもので、結晶構造が密だから消化酵素が入りこみにくくて消化に時間がかかるのかなと思います。

先生
そのとおり!

あゆ
③はよくわからないけど、消化に対して抵抗性がある(resistant)から、レジスタントスターチという名前なのかな。

先生
そのようですね。

あゆ
さっきの冷やごはんはここに分類されるんですね。調理でアルファ化したデンプンは時間がたつと、デンプンの組織から水が分離して生デンプンに近い密な構造になってしまうことや、そのデンプンが「老化デンプン」だと習いました。
※参照<あゆノート1>
※参照<あゆノート1>
<あゆノート1>


先生
あら、わかりやすいわね。

あゆ
ありがとうございます!

先生
レジスタントスターチは、小腸の中でアミラーゼによる消化に抗って、大腸にまで達するデンプンのことで、物理的な性質などで、タイプ分けされています。
後藤勝先生の論文(2)にわかりやすく書かれているので、それで勉強してみましょう。
後藤勝先生の論文(2)にわかりやすく書かれているので、それで勉強してみましょう。
(しばらくして)

あゆ
先生できました!
※参照<あゆノート2>
※参照<あゆノート2>
<あゆノート2>


先生
まぁ。とてもわかりやすいわね。
RS2の「未熟バナナでんぷん」は、黄色の食べごろバナナになる前の「グリーンバナナ」に多く含まれているもので、レジスタントスターチの給源として最近注目されてきているものですね。
RS2の「未熟バナナでんぷん」は、黄色の食べごろバナナになる前の「グリーンバナナ」に多く含まれているもので、レジスタントスターチの給源として最近注目されてきているものですね。

あゆ
後藤先生の論文には、排便促進や食後血糖の低下など、レジスタントスターチの作用についても触れられていて興味を持ちました。これから調べていきたいです。

先生
では、レジスタントスターチの生理作用を次回取り上げることにしましょう。
そうそう、ひとつ注意したいことがあるんだけど。
そうそう、ひとつ注意したいことがあるんだけど。

あゆ
何でしょう?

先生
以前、レジスタントスターチを食べるとやせるかもしれないからって、冷やごはんばかり食べている友達がいるって言ってなかった?

あゆ
はい。今も冷やごはん生活みたいですけど、それが何か?

先生
私たちが通常食べている食品には、消化されるデンプンと消化されにくいデンプンが混在しているんです。冷やごはんもレジスタントスターチが100%ではないから、消化・吸収されるデンプンも一緒に食べていることになるの。冷めても美味しいおにぎりなど、デンプンが老化しにくい工夫がされた商品もあるから、冷たければエネルギーにならないと思って、たくさん食べていると、かえって体重が増えてしまうかもしれませんよ~。

あゆ
大変!すぐに教えてあげないと。

先生
それにしても、私が学生の頃は、食事はいかに食べやすく消化を良くするかということに心を砕いていたのに、今は消化しにくい食べものがもてはやされるなんて、時代も変わったものね~。

あゆ
あはは・・・(昔話が始まると長いから退散しよう)
第2回へ続く