咀嚼は、消化器官のスイッチをONにする!

しっかり咀嚼して食べる

美味しいものを食べているときは、この上ない幸せな時間です。

例えばステーキ、、、

プチプチと油をはじけさせながら湯気を立て、程よく焼けたステーキが運ばれてきました。

人間のあらゆる感覚を刺激します。

まず、嗅覚。焼けた肉汁やコショウの匂いにやられてしまいますね。

分厚いけれどジューシーで、適度に赤くレアな感じのビジュアルが、視覚に強烈に訴えてきます。

「待て」はムリです。

過去の美味しかったステーキの記憶が脳裏に浮かび、それが嗅覚や視覚温度、湿度、刺激などと混然一体となって大脳を刺激し、唾液が溢れ出てきます。

ステーキを堪能している間、歯の神経、歯周組織、舌、口の中の粘膜の温度、触覚、圧力といった様々な感覚センサー、味覚センサーである味蕾が刺激を受けて、大量の情報を大脳へ送り込みます。

特に咀嚼は、あごの関節、筋肉、歯、舌、その他の粘膜の運動を総動員しておこなわれますが、その運動刺激も強烈な情報として大脳へ運ばれていきます。これらは消化、吸収、排泄という一連のシステムの最初のステージで「脳相」と呼ばれています。

唾液腺を含む胃や腸などの消化器系の臓器は、自律神経によってコントロールされています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、副交感神経が優位になるとその消化・吸収活動が活発になります。食事をすることで得られた様々な情報が大脳へ届けられると、消化器系をコントロールしている自律神経(特に副交感神経)が作動して消化、吸収、排泄のシステムがスタートします。

口をもぐもぐさせて食事をしている「脳相」のステージでは、交感神経も副交感神経も高まりますが、唾液線に対しては副交感神経からの指令が届き、消化酵素を多く含んだ唾液が大量に分泌されます。

副交感神経が高まると、胃や腸に対しては胃液や消化液の分泌を促し、蠕動(ぜんどう)運動が活発化することで消化、吸収の準備がなされます。

しっかり咀嚼して食べることは、かみ砕いて胃の消化を助けるという作用もありますが、様々な感覚情報が大量に大脳に送られて消化、吸収、排泄のシステムのスイッチをONにすることでもあるのです。

脳と消化管の関係
※図はイメージです

噛まなくても飲み込めるような食品やドリンク系は、手軽で摂取しやすいのですが、噛むという消化のための大切な段階を素通りして、胃に突然やってきます。胃や腸はまだスイッチオフの状態ですから、「こんな仕事は聞いてないよ!」ということになってしまい、消化吸収の効率が良くない可能性があります。

消化吸収を高めるためには、やはりしっかりと咀嚼しながらの食事と共に、あるいは食後すぐに摂取するとよいでしょう。

ステーキの話の続きですが、ビタミンB12は植物性食品には存在せず、肉などのたんぱく質に多く含まれています。ビタミンB12は神経および血液細胞を保ち、全細胞の遺伝物質であるDNAの生成を助けるので生命活動を維持するために必要な栄養素です。

ところがビタミンB12はそのままだと胃酸によって溶けてしまい、腸までたどりつけません。唾液中に存在するハプトコリンという物質と結合することで、肉に含まれるビタミンB12は胃酸で溶けることなく、十二指腸まで運ばれるのです。

ビタミンCの吸収率も、しっかり咀嚼して食べた場合には高まるということもわかってきています。

しっかり咀嚼するのは、意識をしないとなかなか難しいものです。

特に現代人は柔らかい食べ物を好み、早食いの傾向があるように感じます。忙しいと食事の時間も惜しい !というのはよくわかります。

しかし、よく噛んで食べるという基本を忘れないようにしたいものです。そしてよく噛むためには歯や歯周組織を含めた口腔内を健康に保つことも大切です。

健全な腸内細菌叢(腸内フローラ)は健全な大腸に宿る

よく噛んで食べたものは、小腸で様々な栄養素が吸収されたあと、残りは大腸へ運ばれてきます。大腸においては、水分とミネラルが吸収され、便の形成、排泄へと進んでいきます。

大腸には、もはや一つの臓器とも位置付けられている腸内細菌叢が存在しています。この腸内細菌叢は腸と密接に相互に影響し合いながら、腸の消化器官としての機能のみならず、免疫能をはじめとしたさまざまな役割を支えています。

腸内細菌叢が健全であるためには、消化器系システムがうまく作動していなければならないし、消化器系システムが健全であるためには、腸内細菌叢が健全な状態であることが必要です。

腸内細菌叢には多様性が重要ですが、そのためには「バランスのとれた食事をしっかり咀嚼して食べて消化器系システムを健全に作動させる」ことが大切なのです。

腸内を弱酸性に保ち、有害な菌の増殖を抑制してくれる短鎖脂肪酸を作り出す腸内細菌群は腸内環境にとって非常に重要ですが、その細菌群の餌となる水溶性食物繊維やレジスタントスターチは不足しがちです。

しっかりと咀嚼して食事を摂り、消化器官や腸内細菌群のパフォーマンスが上がった状態でスマートスターチ(グリーンバナナ由来でん粉)などのレジスタントスターチを摂取すれば、大腸に届いたときに、腸内細菌群がより効率的に餌として取り込むことが出来るようになるでしょう。

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